ペイシェントジャーニー(Patient Journey)という言葉をご存じでしょうか?
これは、患者が病気を認知し、治療を受け、回復に至るまでのプロセスを指す概念です。
具体的には、患者が症状を感じて病院を受診し、診断を受け、治療を進める中で、どのような感情を抱き、どのような行動をとるのかを体系的に整理したものです。
ペイシェントジャーニーは、単なる医療の流れではなく、患者の心理的な変化や行動の傾向を含むことが特徴です。医療従事者や製薬会社、医療機器メーカーがこの概念を活用することで、より患者中心の医療やサービスを提供することが可能になります。
ペイシェントジャーニーの構成要素

ペイシェントジャーニーは、大きく以下の段階に分けられます。
- 症状の発生・認知 – 患者が自身の健康状態に異変を感じる。
- 情報収集 – インターネットや周囲の人から病気に関する情報を集める。
- 受診の決定 – 病院やクリニックを探し、予約を取る。
- 診察・診断 – 医師の診察を受け、病気の診断を受ける。
- 治療の選択 – 医師の説明を受けながら、治療方法を決定する。
- 治療の開始 – 処方された薬を服用したり、手術やリハビリを開始する。
- 経過観察・再診 – 治療が適切に進んでいるかを確認し、必要に応じて調整する。
- 回復・健康管理 – 症状が改善し、再発防止のための生活習慣を見直す。
このプロセスを理解することで、医療機関や製薬会社は患者の行動を予測し、適切なサポートを提供することができます。
ペイシェントジャーニーを可視化するメリット

ペイシェントジャーニーを理解し、それをマップとして可視化することには、大きなメリットがあります。特に、以下の3つの点が重要です。
1. 患者の考えや行動に対する理解が深まる
患者の行動や心理状態を詳細に把握することで、より適切なサポートが可能になります。
例えば、ある患者が慢性的な頭痛を抱えていたとします。その患者が最初にインターネットで情報を検索し、市販薬を試し、症状が改善しなければ病院に行くといった流れをペイシェントジャーニーとして描くことができます。この流れを可視化することで、医療機関は「どのタイミングで患者が病院を受診するのか」「どんな情報を求めているのか」を明確にし、適切な情報提供や診療体制を整えることができます。
2. 関係者間で認識を統一できる
ペイシェントジャーニーマップを作成し、関係者間で共有することで、患者の考えや行動に関する共通認識を持つことができます。医療従事者、製薬会社、医療機器メーカーがそれぞれ異なる視点から患者を捉えていると、連携が難しくなります。しかし、ペイシェントジャーニーを活用すれば、患者の目線を共有し、一貫性のある医療サービスの提供が可能になります。
例えば、製薬会社がある薬のプロモーションを行う際、医師だけでなく患者がどのような情報を求めているのかを把握できれば、より効果的な情報発信ができます。また、病院側も患者のニーズを理解することで、治療の際に必要なサポートを適切に提供できます。
3. 医療従事者や患者からの共感を得やすい
ペイシェントジャーニーを通じて、患者の心情や行動を深く理解することができるため、より共感を得やすい医療サービスが実現します。
例えば、がん患者の治療プロセスをペイシェントジャーニーとして描くことで、「診断を受けた瞬間のショック」「治療方針を決める際の不安」「副作用への懸念」といった感情の流れを把握できます。この情報を基に、患者の心理的負担を軽減するサポートを提供すれば、より安心感のある医療環境を作ることができます。
ペイシェントジャーニーの活用事例

1. 医療機関における活用
病院では、ペイシェントジャーニーを活用することで、診療の流れを改善し、患者満足度を向上させることができます。
例えば、初診患者の動線を可視化することで、受付から診察、会計、薬の受け取りまでのプロセスをスムーズにする施策を打つことができます。また、病院のウェブサイトで「初めて来院する方へ」といったガイドを掲載し、患者が不安なく受診できるような環境を整えることも可能です。
2. 製薬会社のマーケティング
製薬会社にとって、ペイシェントジャーニーは重要なマーケティングツールとなります。
例えば、高血圧の治療薬を販売する際に、患者が「健康診断で血圧が高いと指摘されたが、すぐに治療を始めるべきか迷っている」といったペイシェントジャーニーを理解できれば、その不安を解消するための情報提供が可能になります。
3. デジタルヘルスの分野
近年では、デジタルヘルスの分野でもペイシェントジャーニーが活用されています。
例えば、健康管理アプリの開発において、患者がどのタイミングでアプリを使うのか、どんな機能を求めているのかを把握することで、より使いやすいサービスを提供できます。また、遠隔医療サービスの設計にもペイシェントジャーニーが活かされており、患者が「病院に行くべきか迷っている段階」からオンライン相談を利用できるようにするなど、利便性の向上につながっています。
まとめ

ペイシェントジャーニーを活用することで、医療の質を向上させることができます。
今後ますます重要になるこの概念を理解し、患者中心の医療の実現を目指しましょう。
参考文献
「新しい自分」を見つける「患者の旅路」“Patient Journey” to Find “New Me”
著:細田満和子
脳卒中を生きる意味―病いと障害の社 会学.青海社,東京,2006, 細田満和子











