患者の声を活かした新薬申請とは?方法やポイントを解説

かつて新薬を開発するにあたって臨床試験データや科学的エビデンスが重要であるとされてきました。しかし、近年では「本当に患者が求めているのか」といった視点が新薬開発の評価軸として注目されています。

厚生労働省や日本製薬工業協会、PMDAなども患者中心の医薬品開発を提唱しており、患者の声を取り入れる戦略を進めている製薬会社は少なくありません。

本記事では、製薬企業が新薬申請にあたって患者の声を活用するメリットや具体的な方法、ポイントなどについて解説します。

新薬申請における患者の声の重要性とは

新薬開発や申請において、従来は臨床試験によるデータや医学的なエビデンスが重要視されてきましたが、近年では患者の視点やニーズも新たな評価指標として重視されています。

厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)でも、患者中心の医薬品開発を推奨しており、多くの製薬会社がその方針に従って方向転換しています。

患者中心の開発とは

厚生労働省やPMDAは、患者中心の開発を提唱しています。例えば、2020年の「患者参画ガイダンス」において、開発初期の時点から患者や家族を取り入れることを推奨しています。新しいフローでは、患者インサイトを基準とした開発戦略の策定を進める流れが特徴です。

参考:PMDAの患者参画活動|独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)

患者の声が新薬の価値評価に与える影響

医薬品を承認する基準として、その効果と安全性に加えて患者の許容度も重要となっています。例えば、副作用の許容度は、疾患の重篤度によっても異なります。例えば、「がん治療薬であれば多少の副作用は受け入れる」といった声があれば、「慢性疾患であれば副作用は困る」といった声もあります。

患者の声を無視して開発を進めると、患者や医療従事者からの支持を得られない可能性があるので注意が必要です。

近年では、臨床試験でPRO(Patient Reported Outcome、患者報告アウトカム)やQoL(Quality of Life、生活の質)を指標とするケースが少なくありません。こうしたデータを活用することで、患者本位の医療を実現しています。

製薬企業における患者参画の必要性

製薬会社が新薬の開発段階で患者の声を取り入れることで、ビジネス面においてもさまざまなメリットがあります。例えば、医薬品の安全性や効果だけでなく、患者の日常生活における影響や、治療の負担軽減などといった観点からも評価されやすくなるでしょう。

その結果、患者満足度が上がるほか、市場ニーズに合った医薬品の提供が可能です。また、患者に必要な薬として受け入れられることで、治療継続率の向上や医療現場での支持も得やすくなります。

患者参画型の推進例

ファイザーでは、医薬品開発において患者の積極的な参画を推進しています。新薬を開発する段階から、患者さんが参画する機会を設けていることが特徴です。

このことで、患者が医薬品開発に対して認識を高めやすいほか、患者の経験を活かした新薬開発を進めやすくなります。

参考:医薬品開発への患者参画の推進|ファイザー

新薬申請に必要な患者の声を収集する方法

患者の声を正確に把握した上で新薬申請に活かすためには、信頼性の高いデータの収集が必要不可欠です。そこで、次の方法を活用すると効果的に患者の声を集めやすくなります。

  • 患者会・当事者団体との連携
  • リアルワールドデータ(RWD)の活用
  • 医療現場との情報共有

患者会・当事者団体との連携

製薬会社が患者の声を集める方法として、患者会や当事者団体との連携は欠かせません。これらの団体は、患者へのアンケート調査やヒアリング、座談会などの形式で、治療への不安や薬の服用による体調の変化などの情報を提供してくれます。

提供された情報を基に、製薬会社は医薬品の見直しや、患者のニーズに合った開発が出来るようになるでしょう。

リアルワールドデータ(RWD)の活用

近年では、多くの独立した情報源から収集されるリアルワールドデータ(RWD)が注目を集めています。RWDの例として、電子カルテデータやレセプトデータ、患者レジストリデータ、検診データなどが挙げられます。

臨床試験データが、定められた基準に従って収集しているため正確性が高い一方で、RWDは多様性の高い点が特徴です。例えば、臨床試験では、薬の安全性や効果の確認を目的として、被験者を「実薬群」と「対照群」などの複数のグループに分けます。実薬群とは新薬の有効成分を含む治療を受けるグループのことです。RWDを活用して実薬群の患者のみを集めて、対照群はデータで代替することで対応できます。

医療現場との情報共有

医師や看護師、薬剤師などの視点を通して、患者のニーズや困りごとを間接的に把握することも重要です。医療従事者は患者の悩みを肌で感じており、製薬会社が情報として活用することで、より患者のニーズを満たせる医薬品開発につながります。

例えば、薬剤師から副作用への懸念や飲みにくいなどの情報は、服薬アドヒアランスを向上させるためのヒントとなります。多角的な視点で情報を取り入れることで、患者視点の医薬品を開発することが可能です。

患者の声を活かした新薬申請が企業に与える効果

新薬開発や申請時に患者の声を反映させることで、企業にとって次の効果があります。

  • 新薬申請が承認されやすくなる
  • 企業ブランディングが高まる

新薬申請が承認されやすくなる

新薬申請時に、患者の声をただ収集するだけでなく、データを活用した方法や目的などを申請書類に明確に記載することが重要です。例えば、PROやQoLの分析結果を明確にして、患者の視点でどのように開発に反映させたかを具体的に記述することが必要です。PMDAでも、患者視点に基づく開発プロセスを評価項目に含める方向性を示しています。そのため、今後は患者インサイトが活かされているかどうかが、新薬承認において鍵となります。

企業ブランディングが高まる

製薬会社にとって、良い薬を作るだけでなく患者に寄り添った開発が企業イメージの向上に大きく影響する時代です。例えば、第一三共株式会社では、Patient Centricity(患者中心主義)に取り組み、患者ジャーニーを基にがん領域の開発を行っています。IR資料やCSRレポートにおける患者中心の取り組みは、ステークホルダーからの共感や信頼を得やすく、企業の評価向上にもつながります。

参考:Patient Centricity(患者中心主義)を目指して、In Their Shoes(相手の立場に立つ) の取り組み|第一三共株式会社

まとめ

今後の新薬開発において、患者の声を把握し開発戦略に反映させることが必要です。厚生労働省やPMDAも明確に方針を示しており、製薬企業は開発初期の段階から患者インサイトの活用が求められています。

また、形式的なデータ収集ではなく、患者の本音や実体験に基づいたインサイトを丁寧にくみ取ることで、新薬申請が承認されやすくなります。

株式会社メディキャンバスでは、患者様や病気経験者、患者家族の方から体験談を集める「うちあけ」サービスを展開しています。普段感じていることや不安に思っていることなどを話して、楽になってもらうことが目的です。

また、薬剤師が他の患者様にも役立つような客観的な補足をしています。そのため、一貫性と正確性を保った情報を提供しています。

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