製薬企業マーケターのリアル|今求められる5つの戦略視点とは

近年、製薬業界を取り巻く環境はかつてないスピードで変化しています。日本では高齢化が進んでいるほか、医療費の抑制やデジタル技術の進化などさまざまな要因を背景としてマーケティング戦略において大きな変革が必要です。

そのため、従来のようなMRをはじめとした営業活動だけでは多様化する医療ニーズに対応できない場合があります。製薬マーケターはより戦略的で多角的な視点を持つことが重要です。本記事では、製薬マーケターが求められる5つの戦略視点を詳しく解説します。

目次

製薬マーケターの役割はどう変わる?いま直面する3つの課題

常に変化する外部環境の影響によって製薬マーケターの役割は変化しつつある状況です。効果的なマーケティングを実現するにあたって、3つの課題が挙げられます。

  • MR主導の限界と、求められるマーケティングの再定義
  • 社内でのマーケティングの立場が弱い本当の理由とは
  • 開発・メディカルとの連携を阻む“組織の壁”をどう越える

MR主導の限界と、求められるマーケティングの再定義

従来であれば MR(Medical Representatives、 医療情報担当者)が製薬業界のプロモーション活動の中心を担ってきました。しかし、近年では医療機関の訪問規制や医師の多忙化、さらにデジタルツールの普及といった要因が影響することでMR だけでは十分な情報提供が困難になりつつあります。

製薬マーケターはMRが担っていること以外に、より広い範囲においてステークホルダーに対して効果的に情報を発信するための戦略が必要です。デジタルチャネルを使ったり患者や家族への直接的な情報提供をしたり、 医療従事者の間でのオンラインコミュニティを形成したりするなどさまざまなアプローチによって効果的な情報伝達ができるようになります。

製薬マーケターは営業支援以外に顧客体験を設計し、医療機関のブランド価値を高めるための戦略を立案することが求められます。

社内でのマーケティングの立場が弱い本当の理由とは

多くの製薬企業で研究開発 や営業部門と比較してマーケティング部門はその立場が弱いと感じられている場合があります。 製薬業界独特の構造的な要因が背景にあり、新薬開発に巨額の投資と長い開発期間が必要であることから研究開発部門が中心になりがちです。また、新薬の売り上げを上げるために営業部門の発言力が強くなる傾向も見られています。

しかし、市場環境が常に変化する環境においてマーケティングの重要性は年々高まっています。 インターネットやスマートフォンの普及による顧客ニーズの対応化や競合他社への対応、デジタル技術の進化は「従来の良い薬であれば必ず売れる」といった考え方は通用しません。

製薬マーケターは市場の動向をリアルタイムに捉えた上で、製品の価値を最大化するための戦略を立案し、社内外の関係者を巻き込むマネジメント能力が必要です。

開発・メディカルとの連携を阻む“組織の壁”をどう越えるか

新薬の開発から販売 、その後のプロモーション活動まで製薬企業のバリューチェーンは複数の部門に及んでいます。

研究開発から始まりメディカルアフェアーズや営業、マーケティングなどの各部門がそれぞれの専門業務に基づいて業務を遂行するのが一般的です。

しかし、それぞれの部門間の連携が円滑でなければ情報共有が遅れたり戦略の不整合が発生したりする可能性があり、結果的にマーケティング活動の効率性を損なう可能性があるため注意が必要です。

脱・属人的戦略!論理的で差別化されたプロモーション設計

従来の製薬企業でのマーケティング活動は個々のMRにおける経験や知識、またKOL (Key Opinion Leader:主要なオピニオンリーダー)との関係性に依存していました。 しかし、情報過多となっている現代において、 顧客ニーズが多様化しており、属人的な戦略だけでは十分なプロモーションが困難になっています。 今後は客観的なデータを基準とした論理的な戦略設計と綿密なプロモーション戦略によって、競合他社との明確な差別化を図ることが必要不可欠です。

リアルワールドデータを活用した製薬マーケティング戦略の構築法

リアルワールドデータとは、日常の診療内容や患者さんの生活に関わるデータのことです。 例えば、電子カルテやレセプト情報、ウェアラブルデバイスからのデータ、診療報酬明細 などがあります。 リアルワールド データを分析することによって、臨床試験では捉えきれない 薬剤の使用状況や効果、また安全性に関わるような貴重な情報を得ることが可能です。

製薬マーケターはリアルワールド データで収集した情報をもとにしてマーケティング戦略に活用することが求められます。例えば、特定の患者における薬剤の使用状況や治療効果を分析することで、よりターゲットを絞ったプロモーション戦略を進めることが可能です。患者にとってメリットのある情報提供ができる場合もあるでしょう。

また、競合他社が提供している製品と比較することで、自社の製品の強みや弱みを客観的に把握した上で差別化戦略の構築が可能です。そのため、リアルワード データはより効果的なマーケティング活動の実現において重要な要素となります。

ペイシェントジャーニーを基軸にした新薬プロモーションとは

新薬のプロモーション戦略を構築するなかで、 ペイシェントジャーニーの重要度が高まっています。ペイシェントジャーニーとは患者が病気を認識してから診断や治療を受け、その後の経過に至るまでの経験や思いなどを時系列で可視化したものです。患者さんの感情やニーズ、 行動などそれぞれのフェーズにおいて理解することによって患者さんに寄り添った情報提供や サポート体制を構築することが可能です。

新薬をプロモーションするにあたって、製品の有効性や安全性を提供することはもちろんですが、ペイシェントジャーニー全体を考慮した上での戦略構築が求められます。例えば、診断を受ける前に不安を抱えている患者に対しては正確な情報や相談窓口を提供する必要があります。また、治療を始めた患者に対しては服薬の指導や副作用に関連した情報提供、治療継続をしやすいようなサポートプログラムを提供することも考えられます。

KOL依存からの脱却と、新たなインフルエンスモデルの可能性

従来の製薬業界のプロモーション活動では、KOLの影響力が非常に大きいものでした。

KOLが発表した論文や講演での内容は医療従事者に対して重要な情報として薬品の認知度を上げるのに大きく貢献していました。

しかし、医療従事者の情報収集行動の変化や情報チャネルが多様化したことによって、KOのみに依存していると十分なマーケティング活動ができないため対策が必要です。

今後はKOL以外にも患者の体験談や家族が発信する情報や、医療従事者が発信する情報も重要なデータとなり得ます。さまざまな情報を得ることでより、広いステークホルダーに対して多角的な視点から製品の価値を伝えられます。

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オムニチャネルで変える!製薬デジタルマーケティングの現在地

デジタル技術が急速に進化したことで、製薬業界でのマーケティング活動にも大きな影響をもたらしています。インターネットやスマートフォン、SNS などの導入が進んだことで医療従事者や患者が情報を収集するための方法は大きく変化しています。製薬企業は複数のチャネルを連携させることによって、最適な情報提供コミュニケーションを実現させるための、オムニチャネルを積極的に推進することが必要です。

現場感覚を活かしたチャネル設計と顧客接点の最適化

オムニチャネル戦略を進めるためには複数のデジタルチャネルを導入する以外に、それぞれのチャネルが持つ特性を理解した上で最適に設計することが求められます。

例えば、MRの対面情報提供は個別人数への対応や詳細な製品情報の説明には適していますが、 時間や場所に制約を受けるといったデメリットがあります。一方で、Webサイトや SNSによる情報提供は最新情報を効率的に提供できます。しかし、一人ひとりのニーズに対して対応するといった点ではMRによる対応に劣るでしょう。

製薬マーケターはそれぞれのチャネルの強みと弱みを把握した上で、最適な情報提供を実現することが重要です。 MRが訪問したりWebサイトやSNS、オンラインセミナーなどのチャネルを組み合わせることによって、顧客は最適な情報を入手できるようになります。

デジタル導入が遅れている組織に必要なマインドセットとは

製薬業界は他の業界と比較して、デジタルマーケティングの導入が遅れているといわれることがあります。

その背景として製薬業界特有の対面でのコミュニケーションを重視する文化や規制の厳しさ、デジタル技術に関する知識やノウハウ不足などが挙げられます。

しかし、デジタル導入は必要不可欠であり今後の製薬企業の成長につながるための重要な施策です。デジタルマーケティングを成功させるためには、 組織全体のマインドセットへ変革することが重要です。経営者はデジタルマーケティングの特徴や導入する必要性などを理解した上で、積極的に投資を行うことが必要になります。

また、従業員一人ひとりにも新しいツールや手法を積極的に学ぶ姿勢が求められます。デジタル導入の成功事例の共有や外部専門家との連携によって、組織全体のデジタルリテラシーを高めていくことが重要です。

製薬企業内の“共創力”を高める:部門連携を成功させる視点

製薬企業内において共創力を高めるためには、部門連携が必要不可欠となります。

周辺の外部環境が複雑化していることから、単一の部門だけで十分なマーケティング活動を展開することは困難です。研究開発部門をはじめとしてそれぞれの部門が専門性を生かした上で、互いに力を発揮する共創力が今後は求められるようになるでしょう。 

マーケターがハブになるために必要なコミュニケーション戦略

それぞれの部門間において連携した上で共創力を高めるためには、マーケターがハブになることが企業にとって効果的だと考えられます。

市場のニーズや顧客が求めていることを理解しているのがマーケターであり、さまざまな部門に情報を共有することによって企業の戦略立案や目標設定に向けて企業を引っ張っていくことが大切です。

そのため、マーケターには各部門への理解と高いコミュニケーション能力が求められます。マーケターがハブとなって情報交換をスムーズにすることで、効果的なマーケティング活動を実現することが可能です。

開発・メディカル・営業と「共通言語」を持つ重要性

開発部門やメディカル部門、営業部門などの間で連携を深めるためには、共通言語が必要不可欠です。

例えば、マーケティング部門が開発部門と連携する上で、マーケティング部門は開発部門が理解しやすいように顧客ニーズや市場調査の結果を伝えなければいけません。

そのため、複数部門での合同会議やワークショップなど部門間の交流を深めることが重要です。 

企業における共通の目標を実現するために横断的に編成したプロジェクトチームの実現が求められるでしょう。さまざまな部門が共通言語を持つことによって、コミュニケーションがよりスムーズになり企業は意思決定をしやすくなります。

マーケターとしての幅を広げる!今後のキャリアと成長戦略

製薬企業の周辺環境は常に変化しているため、マーケターも自身のスキルや知識を勉強し続けることによってアップデートが求められます。 デジタル技術の進化や顧客ニーズの多様化、さらには製薬業界におけるルールの変更など、マーケティングの知識以外にも学ぶことが多くあり視座を広めることが重要です。

「戦略×実行×人材育成」を両立するマネジメントの実践

企業がマネジメントを実践するうえで、戦略の実行と人材育成が必要です。マーケティング戦略を実現するためには、製薬企業を取り巻く環境の変化をリアルタイムにとらえた上で、 競合他社に対する優位性を確立しなければいけません。また、立案した戦略をさまざまな部門と連携しながら進めていくことが求められます。

効率的にマーケティング活動を行うためには人材育成も重要な要素です。一人ひとりの能力を最大限に引き出すために、適切な指導やフィードバックを行いチームとしてのスキルを高めることが求められます。

 より効率的なマーケティング戦略をするにあたって戦略を立てたうえで実行しながらも、人材育成を継続することで長期的な企業の成長につながります。

情報収集の質を高める:インプット力を鍛える習慣とは

製薬業界の周辺環境は変化が激しいことから、マーケターは常に最新の情報をインプットしなければいけません。 また、 情報過多の時代においては、より質の高い情報を集める習慣を身につけることが重要です。

そのためには、業界専門誌や論文、学会への参加といった製薬業界ならではの情報を入手するほか、市場調査や競合企業の動向を分析、顧客ニーズについても把握しておかなければいけません。社内外にネットワークを構築することによって、より多角的な視点において情報源を多様化できるでしょう。

製薬マーケターが“次の一手”を打つために

製薬マーケターが次の一手を打つためには、次のポイントへの意識が重要です。

  • 現場と戦略をつなぐ、5つの視点で実践するマーケティング改革
  • 変化を力に変える、あなたのキャリアを動かす一歩とは

現場と戦略をつなぐ、5つの視点で実践するマーケティング改革

本記事では、次の5点について解説しました。

  • MR主導からの脱却
  • 社内でのマーケティングの地位向上
  • 部門間の壁を超える共創
  • データドリブンな戦略設計
  • オムニチャネルによる顧客接点の最適化

それぞれの視点において、マーケターが日々の業務に取り込むことによって、製薬業界を取り巻く環境の変化や市場のニーズ、 顧客が求めることなどを戦略的な目標と結びつけることが可能です。また、各部署と連携することにより効率的なマーケティング活動ができるようになります。 

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